2015年5月6日水曜日

毎日新聞(都内版)に掲載!

子供の貧困:なくそう 来月、対策センター設立 支援団体ネットワーク化 /東京
毎日新聞 2015年05月06日 地方版

 6人に1人が貧困状態にある子どもたちの窮状を救おうと、民間の支援者らが6月、財団法人「子どもの貧困対策センター(仮称)」を設立する。今なお問題が広く知られていないため、センターは今後、全国各地の支援団体をネットワーク化して大規模調査を実施し、貧困の実態を社会に訴える。子どもの声を反映させるために貧困を体験した学生らにも参加してもらう方針で、運営に携わる学生らが5日、街頭募金活動を行った。【山田麻未】

 「こどもの日を、子どものことを考える日にしませんか」。連休中の新宿駅前の雑踏。こいのぼりの形のメッセージボードを手に、学生ら約20人が声をからした。多くの人が行き過ぎる中、時折若い女性や年配の男性らがコインを落として去って行く。

 学生の一人の中央大4年、高橋遼平さん(22)は、ひとり親家庭で育った。中学1年で父を亡くし、母、妹との3人暮らしは経済的に楽ではなかった。学費の心配はあったが進学し、今は奨学金で学んでいる。「自分には励ましてくれる親戚がいたから、前向きに生きられた。周囲の支えがなければ、今の自分はありません」

 厚生労働省の最新の調査(2012年)では、平均的な世帯所得の半分を下回る家庭で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す「子供の貧困率」は、16・3%と過去最悪を更新した。貧困率が高いのはひとり親家庭で、特に母子家庭が多い。貧困に苦しむ子どもたちの中には、進学や部活動を望んでいてもあきらめ、将来を狭めてしまう例は後を絶たないという。

 だが、貧困の中でも、携帯電話を持ち、周囲と変わらない服装をしている子どももおり、窮状は見えにくい。高橋さんは「『貧困』という言葉は極端なイメージがある。当事者も『お金はなくても貧困ではない』と思っており、『助けを求めていい』と分かっていない」と指摘する。

 「あしなが育英会」元職員で、センターの設立準備会代表の小河光治さん(50)は「欧米と比べ調査が少ないため、調査によってまず実態を『見える化』し、データを基に対策を取る必要がある」と訴える。

 設立準備会によると、センターは問題に取り組む北海道、東京、京都、大阪などの8団体の代表らが呼びかけ人になって発足準備を進めており、賛同人も300人近くに達している。発足後は各団体と連携して実態調査を行う予定。子どもたちへの入学準備金の支給や、各地の支援団体を対象にした研修会開催なども構想している。

 また、「子どもの現状は子どもが一番知っている」(小河さん)という理由から、学生を理事にするなど運営の中心に据えていく。

 高橋さんは「自分の子はもちろん、他の家の子も日本の未来を担う存在。子どもを育てることを、社会全体で考えてほしい」と訴える。

 設立準備会ではセンター設立のための寄付を呼びかけている。問い合わせは設立準備会のHP(http://khtcjp.blogspot.jp)。〔都内版〕

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